院長ブログ
2016年12月 2日 金曜日
かみ合わせを治しますから、、という意味
咬み合わせを治しますから という意味
やはり矯正専門ではない先生のところからの転医の患者さんです。
治療に不安があるので専門医の意見を聞きたいということで来院されましたが、そのお話のなかで
「うちでは歯並びを治すんではなく咬み合わせを治すので、すごいきれいには並びませんよ」 とその先生がお話されたと聞きました。
すごくきれいにならぶ必要があるかどうかよりは咬み合わせが重要という観点にたたれているのだと思います
。咬み合わせが重要というのは決して悪い考えではありません。
でも正直申しますと、いわゆる歯科医院の収益をあげるためのコンサルタント会社が勧めそうな表現だなあというのが、率直な感想です。なんにしてもベストの結果は得られないという治療ですよね。
本質的な問題としては、咬み合わせが大切というなら、その治療法と治療開始時期は適切ですか?と私は聞きたいです。
矯正専門医が咬み合わせを治すというときは、まず奥歯、小学校低学年の子どもであれば、6歳臼歯の咬み合わせの関係が適切かどうかをみます。
そして、前歯の咬み合わせに関しては、反対咬合(上の歯が下の歯よりも後ろにある状態)があれば、それは治すことがあります。
もっと分かりやすくいうと、乳歯と永久歯がまだ混ざって生えている年齢で下の歯だけを動かすということはほとんどありません。
なぜかと言えば基本的に下の前歯の治療はいそぐ必要がないからです。早く治療を行う必要性があれば早く行います。
でも咬み合わせが完成するのは、早くても女の子で中学入学前後、男の子だとそれより1〜2年遅くなります。
ということはそこまで咬み合わせがよいかどうかはわからないこともあるので、早く治療を始めても早く治療が終わらないことがあります。
今回、転医を希望されてきた患者さんは、下顎だけに装置がついていました。当院での検査の結果は骨格的な問題もなく、結果的には咬み合わせを治す目的でなぜ下顎に装置をいれているか私には理解ができませんでした。
これが早く歯並びを治すためというなら、まだ理解できるのですが、先生は並びを綺麗にするのではなく、噛み合わせを治すという...僕からすると、おっしゃっていることとやっていることが矛盾しているとしかおもえません。
もっと驚いたのは、この患者さんが当院で治療に移る段階で、矯正治療用のレントゲンを撮影するとき、床矯正をやっていた先生のところではそんなレントゲンは撮っていないとおっしゃられたことです。
正直私は心底がっかりしてしまいました。
何故我々がレントゲンを取るかというと、目で見ただけではわからないからなのです。
実際矯正治療を始める前に全ての患者さんにおいて矯正用のレントゲンを撮影するのですが、見た目とレントゲン撮影後の分析の結果が大きく異なることがあります。
この矯正用のレントゲン撮影をしないという問題は、昨年NHKの朝の情報番組でも取り上げられたことがあります。
矯正治療のためのきちんとした診断には必須のものです。
矯正の診断がきちんと行われているかどうかはまた次の機会に書きたいと思います。
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2016年7月 1日 金曜日
床矯正を始める前に
最近床矯正の相談が多いです。
「実は歯医者さんで床矯正をすすめられて、、」という相談のお母さん。
この間は、「床矯正をやろうとして検査をしたのですが、これは床矯正では厳しいので専門医に行ってください」と言われたというお母さんもいました。
でも、後者の先生は良いのです。これは床矯正でやってはだめだという見極めがついているのですから。問題は何でも床矯正でやろうとしてしまう場合です。
私は、患者さんがどうしてもということであればやることはできますが、正直ほとんど床矯正装置は使いません。でも、大切なのは床矯正でやるかどうかではありません。きちんと治療ができるかどうかなのです。矯正専門医は、治療の目標に対してこういう治療をやるのがベストなので、こういう装置を使いましょう。どうしてもこの装置が嫌ならこの装置でも可能ですけど、少し効果は劣るかもしれません、などと、治療の選択肢はいくつかを持っていることが多いです。
でも、床矯正をすすめる先生のほとんどは、全ての症例を床矯正でやります。矯正専門医の多くが床矯正を第一選択にしないことが多いのは、治療の効率や結果があまりよくないことを知っているからなのですが、冷静に考えていただければ、全ての患者さんを同じような装置でやるというのは不思議なことではないでしょうか?
床矯正装置はメリットだらけのように感じるのかもしれませんが、治療を始める前に少し冷静になって検討されることをおすすめします。専門医にもぜひ相談を受けてください。
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2016年6月 7日 火曜日
歯が生えない
6歳前後という言葉を使いましたが、当然個人差は大きく、生え替わりの早い子もいれば遅い子もいます。患者さんに私が伝えるのはその順番です。
多くは下の前歯真ん中2本が生え替わりその後に下の前歯4本が生えそろいながら、上の真ん中2本が生え替わり、その後に上の4本が生えそろいます。
この順番どおりであれば、問題となることは多くありません。でも例えば、上の真ん中の歯が生え変わる前に、上の2番目の歯が出てきてしまったという場合は、なにか問題があるかもしれないと我々は考えます。
また、左右の歯は概ね同じ時期にはえることが多く、そのずれは通常4か月以内であることが多いとされています。ですから右の歯がはえはじめたのに4か月たっても反対側が出始めない場合も何か問題があるかもしれません。
生えない場合は、歯肉に切開を加えることで出てくる場合もありますし、矯正装置を使って引っ張らなければならない場合もあります。お近くの矯正専門医の意見を聞くのがよいでしょう。その場合はレントゲン撮影が必要になることが多いと思います。
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2016年4月 4日 月曜日
噛み合わせを良くする意味って?
それに対して私は「やらないとだめということはありません」といつも答えます。
日本は皆保険制度の国です。特定の疾患以外の矯正治療が認められていない現状、やはり矯正治療は必須のものではないのだと思います。
しかし、見方を変えると 日本の保険制度は特に歯科においては、予防というものがほぼ認められていません。フッ素塗布だって保険適用ではないですよね。
お子さんもいつかは、年を取り大人になっていきます。そこを見据えた矯正治療という概念は以前からありましたが、最近このあたりのバックグラウンドがより鮮明になりつつあります。
テレビでもよく取り上げられる言葉としてフレイルという言葉があります。これは衰弱という意味です。歯科ではオーラルフレイル(口腔周囲筋の衰弱)というように使われ、咬む筋肉や舌の筋肉の活動の低下が 全身の筋力の低下や加齢による運動障害の前兆として現れるということが東京大学の研究によっても明らかにされつつあります。
このオーラルフレイルの予防には、咬み合わせを維持するということが非常に重要です。咬み合わせを維持するという考えには、もちろん歯がなくなったところに入れ歯やインプラントを入れる、もしくは被せ物をつけるというのも処置の方法ですが、やはり歯を失わない、むし歯にならないというのが理想であるのは言うまでもありません。
咬み合わせが悪い患者さんが矯正治療をすることは、咬み合わせをよくして咬む筋肉をしっかり作用させます。咬むことにより歯にかかる力は均等化されますので、歯周病は進行しにくくなりますから、歯を失うリスクも軽減されます。また歯並びの悪い患者さんが矯正治療をすると、見た目だけでなく歯磨きが容易にできるようになり、やはりむし歯や歯周病のリスクが軽減し、咬み合わせの維持には有利にはたらきます。
オーラルフレイルという考えは、高齢社会になってきてはじめて現れた概念ですが、適切な矯正治療をして若いうちに良い歯並び良い咬み合わせを得ておくことが、年取ってからも元気で健康でいられる時間が長くなるということです。
特にお子さんでも、骨格的な問題が疑われる場合は、早めの矯正治療も必要になってきます。骨格的な問題は小学校中学年くらいまでには治療を開始したいところです。今だけでなく良い咬み合わせは年をとってからもより大切になってくるわけですので、未来のためには価値ある投資ではないかなと思います。
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2016年1月20日 水曜日
顎がちいさいので という相談
顎が小さいというのをどのような意味で捉えているかは患者さんそれぞれで、実はその「小さい」という言葉の意味が共有されていないことも少なくありません。いわゆる出っ歯で下顎が小さいという場合と、歯がならびきれずでこぼこがあるので顎が小さいという二つの意味があると思います。
上顎に対して下顎が小さい場合は、下顎をより成長させて出っ歯の原因となるような骨格的な問題を解決するような方法をとることが多いです。この治療は多くの場合永久歯が完成してからはなかなか難しいので、小学生中学年までには着手したい治療になります。
もう一つの場合は、でこぼこの原因が本当に顎が小さいことが原因かどうかを確認することが大切です。これは上顎のでこぼこでも同じですが、顎の大きさが普通でも歯が大きければやはりでこぼこは出てきてしまいます。そういう場合、顎を普通以上に大きくして治療するのが適切なのでしょうか。実際には上顎は横に広げる(拡大)することで歯がはえる場所を大きくすることができますが、下顎はその構造上矯正装置で顎自体を広げて大きくすることができません。
下顎は前後方向には骨格的不正を改善はある程度できますが、横方向には矯正装置をつかって骨格的な問題を解決することはできないのです。
私をはじめ、多くの矯正専門医は顎を広げることについて、前歯が4本生えたぐらいの段階では、まだ自然に顎が広がる時期なので特に下顎についてはなにもしない場合が多いと思います。なぜならこの段階で装置を入れても入れなくても同じ結果になる可能性が高いからです。
このことは、多くの歯科医も誤解しているところです。拡大とか顎を広げるという治療が提案された場合は、念のため矯正専門医のセカンドオピニオンをおすすめします。
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