院長ブログ

2016年4月 4日 月曜日

噛み合わせを良くする意味って?

矯正治療はやらなくてはだめですかと聞かれることがあります。
それに対して私は「やらないとだめということはありません」といつも答えます。
日本は皆保険制度の国です。特定の疾患以外の矯正治療が認められていない現状、やはり矯正治療は必須のものではないのだと思います。
しかし、見方を変えると 日本の保険制度は特に歯科においては、予防というものがほぼ認められていません。フッ素塗布だって保険適用ではないですよね。

お子さんもいつかは、年を取り大人になっていきます。そこを見据えた矯正治療という概念は以前からありましたが、最近このあたりのバックグラウンドがより鮮明になりつつあります。

テレビでもよく取り上げられる言葉としてフレイルという言葉があります。これは衰弱という意味です。歯科ではオーラルフレイル(口腔周囲筋の衰弱)というように使われ、咬む筋肉や舌の筋肉の活動の低下が 全身の筋力の低下や加齢による運動障害の前兆として現れるということが東京大学の研究によっても明らかにされつつあります。

このオーラルフレイルの予防には、咬み合わせを維持するということが非常に重要です。咬み合わせを維持するという考えには、もちろん歯がなくなったところに入れ歯やインプラントを入れる、もしくは被せ物をつけるというのも処置の方法ですが、やはり歯を失わない、むし歯にならないというのが理想であるのは言うまでもありません。

咬み合わせが悪い患者さんが矯正治療をすることは、咬み合わせをよくして咬む筋肉をしっかり作用させます。咬むことにより歯にかかる力は均等化されますので、歯周病は進行しにくくなりますから、歯を失うリスクも軽減されます。また歯並びの悪い患者さんが矯正治療をすると、見た目だけでなく歯磨きが容易にできるようになり、やはりむし歯や歯周病のリスクが軽減し、咬み合わせの維持には有利にはたらきます。

オーラルフレイルという考えは、高齢社会になってきてはじめて現れた概念ですが、適切な矯正治療をして若いうちに良い歯並び良い咬み合わせを得ておくことが、年取ってからも元気で健康でいられる時間が長くなるということです。

特にお子さんでも、骨格的な問題が疑われる場合は、早めの矯正治療も必要になってきます。骨格的な問題は小学校中学年くらいまでには治療を開始したいところです。今だけでなく良い咬み合わせは年をとってからもより大切になってくるわけですので、未来のためには価値ある投資ではないかなと思います。

投稿者 高橋矯正歯科医院